私の名前は南、25歳。医療事務の仕事をしており、現在は出産のため実家に里帰りしている。結婚してから、夫の拓哉と二人三脚で新しい生活を築いてきた。拓哉はとても優しく、家事も手伝ってくれる理想的な夫で、私にとってはまさに完璧なパートナーだ。

私たちは結婚してから少しの間、タワーマンションで二人暮らしをしていた。家は広く、仕事の合間にゆっくり過ごすことができ、幸せな毎日を送っていた。ある日、私の妊娠がわかり、しばらくしてから、出産のため実家に帰ることになった。実家では母が助産院を営んでおり、そちらで出産する予定だった。

両親にとっては初孫であり、みんなでお祝いしてくれたが、実家に帰る前に祖母が寝たきりの状態だということを知った。祖母は私が結婚する前に一度お会いしたことがあり、タヤにも紹介していたが、その後、体調を崩して寝たきりになっていた。母が介護をしているため、私はしばらく実家で過ごすことになった。

ある日、私が里帰りしているとき、祖母が突然私に言った言葉に驚いた。

「産んでもウチには帰るな」

その言葉に私は驚き、意味がわからず聞き返した。祖母は寝たきりの身ではあったが、私が出産した後も帰るなと言ってきた。どういうことか分からず、私は祖母に反論した。

「おばあちゃん、何言ってるの？帰るに決まってるじゃない」

祖母は少し悲しそうな表情を浮かべながら、「あんたが帰ると苦労する」と言い続けた。私はその言葉が理解できず、祖母に対して強い口調で返してしまったが、どうしても納得できなかった。

その後、母に相談をしたところ、母は少し驚いた顔をした後、静かにこう話し始めた。

「おばあちゃん、昔から不思議な力があるのよ。何かを感じ取る力があるんだ。」

私は驚きながらもその話を聞いた。母は、祖母が過去に何度も不思議な力で家族を助けたことがあると言っていた。例えば、友達の家に遊びに行くと言って泊まりに行った母が、その後大きな事故が起きるのを事前に察知し、祖母に止められたことがあったというのだ。

「私はそれを信じていたわけではないけど、確かにおばあちゃんが言うことには、時々不思議な真実があるのよ」と母は続けた。

その話を聞いたとき、私は何か不安を感じた。祖母の言うことが、もしかしたら何か大きな意味があるのではないかと感じ始めた。そして、そんな時に夫の拓哉が部屋に入ってきた。

拓哉は普段、何事も明るくて楽観的な性格だが、今日は少し様子が違っていた。私が祖母のことを話すと、拓哉は無言で聞いていたが、突然小さな声でこうつぶやいた。

「もしかして、おばあちゃんが言ってたことって本当なのかな。」

その言葉に私は驚き、拓哉を見つめた。拓哉がこんなことを言うなんて思ってもみなかったからだ。拓哉はさらに続けた。

「実は、僕も最近少し変なことに気づいたんだ。」

その時、私は拓哉の言葉が気になりすぎて、話を進めることができなかった。拓哉は続けて言った。

「僕の仕事に関係することなんだけど、最近、少しおかしな案件に関わってしまった。自分でも不安に感じていることがあって。」

拓哉の言葉に私は心底驚き、言葉を失った。その後、拓哉が話し始めた内容を聞くと、彼が知らずに関わっていたビジネスの一部が、実は不正なものだったのだ。

拓哉はそのことを感じ取っていて、何かしらのリスクを避けようと考えていたらしい。

そのとき、私の頭の中で祖母の言葉が鮮明に浮かんだ。祖母が言っていたことが、もしかするとこのことに関係しているのではないかと。私はその後、拓哉と話を続けることができず、部屋を出て祖母のもとへ行った。

祖母に再び会うと、私は心から謝りたいと思った。祖母が心配していたことが、現実のものになりつつあることに気づき、私はやっと祖母の言葉の重みを理解した。そして、祖母が私に言った「産んでも帰るな」という言葉は、私を守るためだったことを実感した。

その後、拓哉と一緒にその問題を解決し、私たちは家族としてより強い絆を感じることができた。祖母の不思議な力が、今まで感じられなかった何かを私に教えてくれたような気がした。

結局、私たちは祖母の言葉を大切にしながら、家族としての未来を考えて進んでいくことにした。